こんにちは、青山です。
今回は秘密結社にご注意を (著:新藤卓広)のレビューとなります。
「秘密結社にご注意を 」のあらすじ
ストーカー容疑から会社をクビになり、引きこもりの生活を続けていた青野恵介は、ひょんなことから“秘密結社”に就職することになる。息子を誘拐された会社員は、犯人からの指示でのこぎりを購入している。ピッキングが趣味の男は挑戦状を受け取り・・・。まったく無関係にみえたそれぞれの事件がやがてつながり始めて――。『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞のユーモア・ミステリー。(裏表紙より)
短編小説をつなぎ合わせた群像劇
『このミステリーがすごい!』大賞に入賞した作品って、基本的にライトノベルなんですかね?
どれを読んでもそう感じます(さよならドビュッシーはそういう感覚が薄かったですがね)。
まあ、読みやすいからいいですけど、できることなら“これはライトノベルです”と宣言してほしいですね。
ライトノベルだと、小説の勉強にならないんですよ。
気の利いたレトリック(修辞)も無いし、登場人物の心理描写も上手くないし、風景や動作の描写も適当ですからね。
息抜きとして読むのはやぶさかではないですが、はりきって勉強しようとしているテンションアゲアゲの状態で読まされるのは嫌なんですよ。
萎える。
ガン萎え。
なので、表紙裏にでも、これはライトノベルですと提示してほしいです。
と、不満を述べ終わったところで書評に移りたいと思います。
本作も例外なく、ライトノベル感が満載ですね。
そういう作品だと思って読めば楽しいけれど、そうでなければ物足りない。
出だしはいいですよ、物語に引き込まれます。
なんで雨も降っていないのに傘なんかさしているんだ?って疑問に思いますからね。
しかし、問題はその後です。
いきなり場面が変わる。
登場人物も入れ替わり立ち替わりする。
時系列は滅茶苦茶。
なんじゃこりゃぁ!!!(松田優作風に)
アニメやドラマや映画だったらいいですよ。
映像としてなら、スッと頭に入ってきますからね。
しかし、小説でこれをやっちゃいかんでしょう。
でも、私が一番気に入らないのは、本作が非常に“面白い”ってことです!!!
ちくしょう、始末が悪い。
中だるみすることなく、最後まで一気に読めてしまったよ!!!
何種類かの短編小説の主人公が同じ世界で邂逅する群像劇のような楽しさがある。
バラバラだったパズルのピースが、カチャカチャと小気味良い音をたてながらハマっていく感覚。
そのパズルのつなぎ目は粗いし、材質は安っぽい。
だが、浮かび上がった絵は見事だった。
完全にやられた。
閉口するしかない。
欠点だらけではある
負け犬の遠吠えのように欠点を挙げれば、やはり文章が簡素だということですね。
著者にポテンシャルが感じられません。
例えば、前回の“煙が目にしみる”を引き合いに出しましょう。
この作品を読んでいると、“著者は実力を隠しているな”という雰囲気が端々に使用されている単語によって分かるのですが、本作にはそれがありません。
加えて、意味不明なこともあります。
それはP.60の6行目。
どうして“いす”って平仮名になっているんでしょうか?
いや、この一つだけだったら校正ミスだな、で済ませられるのですが、P.102、P.147、P.285の“いす”も平仮名だったので、著者が故意に平仮名にしていることは明らかです。
なんでそんなことするのかな?
漢字で“椅子”と書くのが堅苦しいと感じるのなら、せめて“イス”ってカタカナにすればいいのにね。
・・・ま、まさか・・・これも著者の策略・・・って、んなことないか。
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