こんにちは、青山です。
今回はドS刑事・風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件 (著:七尾与史)のレビューとなります。

「ドS刑事・風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件 」のあらすじ

静岡県浜松市で起こった残虐な連続放火殺人事件。被害者は元ヤクザ、詐欺師、OLなど様々で何の手がかりもない。しかし「ドS」な美人刑事・黒井マヤは現場で「死体に萌える」ばかりでやる気ゼロ。振り回されっぱなしの相棒・代官山脩介は被害者の間で受け渡される「悪意のバトン」の存在に気づくが――。最強ユーモアミステリー、シリーズ第1作。(裏表紙より)

以前ご紹介した“即興ワルツ一曲処方します”に続き、またまたタイトルに惹かれて購入した作品です。

何を隠そう、私こと青山心吾はドSの対極にあるドMなのでね。
本作と私が出会えば、素晴らしい化学反応が期待できると思いましてね。
テーゼとアンチテーゼをアウフヘーベンする、みたいな?(意味不明)

方向性が微妙に違う

主人公の黒井マヤさんは二十五歳、独身。
次期警察庁長官を父に持ち、階級は巡査部長。
白磁を思わせる肌と漆のように黒く長い髪。
やや切れ長の目に、通った鼻筋。
かすかにつり上がった上品な薄い唇。

うん、パーフェクト!!!

こんなに完璧な出自と容姿の女性はいないだろうね。
しかしまあ、天は二物を与えず。
性格が捻じ曲がっている。

本書のP.353にマヤさんの説明が書かれているので、ネタバレしない程度に引用します。

刑事としての正義感ゼロ。殺人現場マニア。性格は高飛車、傍若無人。ダリオ・アルジェント監督の鮮血で彩られた猟奇映画を楽しむ

家柄はいい、容姿もいい。
しかし、高飛車で傍若無人で、その上に猟奇趣味ときている。

いや、ドMな私としては、高飛車で傍若無人ってところまでは良かったんですよ。
むしろ、良いなんてもんじゃない。
こんな女性を世に生み落としてくれた神(著者)へ感謝したいくらいだ。

でも、猟奇趣味は違う!
それは求めてない!
死体を見て興奮する女性なんて・・・。
他人をいたぶることに快感を覚える嗜虐嗜好の持ち主だというのなら完璧だった。

気に入らないことがあるたびに、理不尽な暴力を部下に振るうような、そんな女性だったら良かったのに・・・。
もっとも、それでは普通過ぎてインパクトに欠けるか?
う~ん、難しいところですね。

ベタな設定にして並の評価を得るか、一か八か冒険してみるか。
私としてはベタな方が有難かったですけどね。
惜しいなぁ。

芸術か商品か

最近、小説のラノベ化が顕著ですね。
本作もラノベ感が満載です。
確かに面白いですよ。
面白いけれど、増えて欲しくはないですね。
だって、読んでも勉強にならないですから。
自分のレベルを上げるために読書をしているのに、抽象度の低い作品がスタンダードになってしまったら困るんですよ。

ただね、そこは小説家も苦労している所なんですよね。
ラノベを書きたくて書いてる人は、それほど多くないんですよ。

じゃあ、どうしてラノベを書いてしまうのかというと、“そうしなければ売れないから”です。現代人の活字離れは深刻で、新聞や本などの紙媒体の売り上げは減少の一途をたどっています。

“いきおい”(注1)、小説は読みやすいものしか売れなくなるわけですね。

つまり、ラノベしか売れない。
だから作家さん達は不本意ながらもラノベを書くしかないわけです。なぜなら、小説は芸術である前に商品ですから、売れなきゃ話にならないですもの。

最大多数の最大幸福を考えると、そうするしかないというのが現状ですね。
本作の著者も、きっと満足していないと思いますよ。
売れるために仕方なく妥協した感じが伝わってきます。

意に染まぬ方向へ努力しなければならなかった著者の苦痛を考えると、いたたまれないですね。

注1:当然の結果として。

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