こんにちは、青山です。
今回は一曲処方します~長閑春彦の謎解きカルテ~ (著:沢木褄)のレビューとなります。

「一曲処方します~長閑春彦の謎解きカルテ~ 」のあらすじ

悩める患者の心を音楽で癒す心療内科「のどか音楽院」。その院長・長閑春彦(のどかはるひこ)は春の海のように穏やかな青年だ。だが、実は人の心に秘められた楽曲を聴く能力を持っている。ポップスからクラシックまで流れてくる一曲を手掛かりに、長閑は患者の隠された不安や迷いの原因を解きほぐしていく。やがて、長閑自身の哀しい過去も明らかになって・・・。切なくて、あったかくて、音楽がもっと好きになる連作ミステリー!(裏表紙より)

そのアイデアは出てこないよ

即興ワルツに引き続き、何の賞も獲得していない作品ですね。
本作もタイトルに惹かれて購入しました。
だって、“一曲処方します”ですよ?
「曲が薬とは、これ如何に?」
って思うでしょ。
こういうエキセントリックな作品は嫌いじゃないんですよ、私。

本作の内容は、まあ、大体はあらすじに書かれている通りですね。
他人の心の情景を音楽として聴くことが出来る能力を持っている心療内科医が主人公で、患者の楽曲から悩みを見抜いて、それを解消するための歌などを提供するという斬新な物語。

特筆すべきは、楽曲についての豆知識ですね。
作曲者の波乱万丈な生涯や時代の流れによる曲の変遷など、目から鱗が落ちます。
著者はよく勉強していますね。

言葉の間違いが多くね?

しかしまあ、言葉の間違いが少し気になりました。

例えば、P.14とP.222に出てくる≪肩をなでおろす≫という表現。
いやいや、肩はなでおろせないでしょ、物理的に考えてさ。
これは、安心する・ホッとするといった意味の言葉である≪胸をなでおろす≫の言い間違いです。

次に、P.32に出てくる≪顔を反らす≫。
反らすって、弓なりに曲げるって意味だからね。
顔は弓なりにならんでしょ。
≪反らす≫ではなく≪逸らす≫が正しいですね。
どちらも(そらす)と読みますが、意味が違うんですよ。

さて、どんどん参りましょう。

P.97、≪功を成す≫。
これは、人が成果を出すという意味です。
本文では≪仮病作戦が功を成す≫という使われ方をしています。
仮病作戦という単語から考えて、ここで使うべき言葉は、策が効果を出すという意味の≪功を奏す≫が正しいでしょう。

P.98に出てくる≪母親を窘(たしな)める≫。
確かに窘めるには、相手の悪い点を注意するという意味がありますが、私なら≪諫(いさ)める≫を使いますね。
母親は目上の人なので、立場が上の人の悪い点を注意するという意味があるのは≪諫める≫なんです。
まあ、これは間違いというほどでもない気はしますが、ちょっと目についたのでね。

P.144、≪浮足立って≫。
浮足立つは、恐怖や不安で落ち着きを失うという意味です。
しかし、文脈から考えるとおかしいですね。
幸せそうにしている人が恐怖や不安を感じているとは考えづらいでしょう。
ここで使うべき言葉は≪色めき立って≫が正しいでしょう。
≪浮足立つ≫と同じく落ち着きを失うという意味がありますが、こちらは緊張や興奮などが原因ですからね。

私が気付いたのは上記の五つです。
これは多いですよ。
売文業のプロにしては、いささか言葉に対する意識が低いのではないでしょうか?

まあ、プロでも完璧だって人はほとんどいないんですがね。
一つか二つは間違っていますよ。

その道数十年のベテランでも、憮然とか敷居が高いとか煮詰まるって言葉の意味を間違えて使っていますからね(わかってて故意に間違えている人もいそうだけれど)。

しかし、本作は五つも気になったのでね…

・・・って、この批判、私にもいつかブーメランになって返ってきそうだな(笑)。

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