こんにちは、青山です。
今回は傍聞き(著:長岡弘樹)のレビューとなります。
「傍聞き」のあらすじ
娘の不可解な行動に悩む女性刑事が、我が子の意図に心を揺さぶられる表題作「傍聞き」。
他、四編。
今まで読んできた短編の中で最高の作品
私は昔、短編ばかり読んでいた時期がありました。
少ない時間で読めるからです。
仕事が忙しいと、どうしても読書の時間が削られてしまうので、長編には手を出せませんでした。
何故かというと、私は途中で読むのを止めることができない人間だからです。
読み始めたら、とにかく最後まで読まないと気が済まないんです。
融通が利かないんですよ。
すごい頑固ですしね。
まあ、ポジティブに表現すれば、集中力と忍耐力が高いと言えるんですがね。
物は言いようですよ。
今はかなり時間に余裕があるので、短編はまったく読まなくなっていましたが、久しぶりに読みたくなったのでこの作品を手に取りました。
この作品、前から気になってはいたんですよ。
なんでかというと、帯に書かれている文章がすごいんです。
「この20年で最高の傑作! 仕掛けと感動の珠玉短編を堪能せよ」
「一切のムダを排して滋味に富み、研ぎ澄まされた短編ミステリの凄味が存分に味わえる、これぞ本屋の店員が“百万部売っても売り足りない!”と叫びたくなるほどの珠玉の一冊だ!」
おいおい、ハードル上げすぎじゃないか?
大丈夫かよ?
そんな風に、猜疑心マックスになりますよね。
私の期待値もかなり上がりましたよ。
もしこれでショボい内容だったら帯の文章を書いた奴にクレームをいれてやろうと本気で考えました。
短編小説のルノー・ラビレニ
で、取りあえず、一番自信があるのであろう表題作、傍聞きから読むことにしました。
胡散臭そうに文章を視線でなぞりながら数ページ……お?
中盤……むむ?
終盤……ほう!
ラスト三ページ……マジか!!
ってな感じで、この作品は、あんだけ高かったハードルの遥か上を軽々と跳び越えていきました。
まさに、短編小説の“ルノー・ラビレニ”(注1)や~~~!
疑って申し訳ありませんでした。
忸怩たる思いです。
私の中で短編小説のベスト作品と言えば、日下圭介さんの「仰角の写真」でしたが、今からは「傍聞き」です。
胸を張ってそう言えます。
え?
そんなにハードル上げて大丈夫かって?
全く問題ありません。
どれだけ高いハードルでも越えていきますよ、この作品は。
正直、読まなきゃ損ですよ!
注1:フランスの男子陸上競技選手。専門は棒高跳び。男子棒高跳びの世界室内記録保持者。