こんにちは、青山です。
今回は扉は閉ざされたまま(著:石持浅海)のレビューとなります。


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「扉は閉ざされたまま」のあらすじ

大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。〈あそこなら完璧な密室をつくることができる……〉伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。自殺説も浮上し、犯行は成功したかのようにみえた。しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬を紐解いていく優佳。開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった……。(裏表紙より)

スリリングな頭脳戦

この作品はいわゆる“倒叙ミステリ”です。
倒叙ミステリとは、冒頭で犯行の様子が描写されるもののことです。
したがって、読者には犯人の正体が明かされています。
あらすじに書いてある通り、犯人は伏見亮輔という男です。

犯人が判明しているなら、一体この作品は何が面白いんだ?

よくぞ聞いてくれました!
それは、犯人と探偵の頭脳戦です!

殺害現場へ誰も踏み込ませたくない犯人・伏見と、部屋の扉の外で中の様子を推理していく探偵・碓氷、その両名の知力による攻防が楽しいのです!

犯人・伏見は一見、完璧な密室をつくり上げます。
私も最初に読んだ時は、これといって綻びはないように思えました。
しかし、探偵・碓氷は些細な点から、事故にみせかけた殺人と、それを行った犯人を特定します。

この作品の17ページまでに密室を作成する工程が描かれているので、興味のある方は本作を手に取り、どこに穴があるか推理してみてください。
きっと心が躍りますよ!

犯人に共感できた私は……

この作品の登場人物はみんな魅力的です。
キャラが立っているんですよ。
それ故にラノベ感も若干あるのですが……まあ許容範囲内です。

中でも、私が気に入ったのは、犯人の伏見亮輔です。
何故、私が彼を気に入ったのかというと、その考えに共感できたからです。
以下に、彼の思想がわかる箇所を本文から引用します。

伏見は生物系の学部に在籍し、四年生で研究室に配属になってからは、動物実験に明け暮れていた。
そして実験に使う犬を解剖していたときに、ふと気づいたのだ。
生物は、しょせんパーツの集合体だと。

ん?
どうしました?
なんで引いてるんですか?

いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
この部分だけ聞いたらサイコな香りがする奴だと思われるでしょうが、そうじゃないんですよ。

皆さんは、臓器提供意思表示カードというものをご存知でしょうか?
自分が死んだときに、肉体の中で使える臓器があった場合、それを必要としている他者へ譲りますという、死後の意思を生前に示すことができるものです。

学生の頃に記入した覚えがあるという人もいるでしょう。
もし見たことも聞いたこともなかったという人がいましたら、私は是非とも記入していただきたいと思います。

我々は所詮、死んだらただの肉の塊です。
その肉の塊が誰かの役に立つというのなら、こんなに嬉しいことはないじゃないですか?

想像してみてください。
たった一つの臓器がうまく機能しないために、命の灯が消えようとしている人がいます。
でも、あなたの臓器があれば助けられるんですよ。
最高じゃないですか!?

もちろん、臓器提供を強要するつもりはありませんが、死後にまで肉体に執着する意味はないのではありませんか?
もし、私の言葉で足りないのであれば「Angel Beats!」というアニメを観てください。
考え方が変わると思います。

ここからネタバレ

しかしまあ、こんな人は臓器提供をやめてほしい、という人がいます。
それは、殺害された新山のような人間です。

性感染症などの病を発症する可能性のある行為に身をさらし続ける不潔な奴。
だからこそ伏見は、そんな新山が臓器提供意思表示カードを持っていることが我慢できなかった。
もしも、病に汚染された臓器が他者に移植されでもしたら……。

生を切望する人を冒涜する、それはつまり、生そのものを冒涜することです。
私は、犯人の気持ちが痛いほど理解できました。
でも、これが理解できない人が結構いるようです。

その理由は以下の通り。

①新山は結局、臓器提供はしていないから、誰に迷惑をかけたわけでもない。
②病気をもらうような行為に及ばないように言い聞かせればいい。
③そもそも、新山に臓器提供意思表示カードを破棄させれば済む話。

違うんだよ、そうじゃないんだよ。
そういう解決策を考えられる余地がないほどに激憤しているんだよ。
こうなるともう“殺す”以外の選択肢がなくなってしまうんです。

……しかしながら、犯人に共感できる私って、ヤバイ奴なのかなぁ?

 

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