皆さんは、新聞配達についてどれくらいご存知でしょうか?
お客さんの家に新聞を届けるだけの単純な仕事だろう、くらいの認識でしょうか?

今回は、身近な仕事なのに意外と知られていない新聞配達の実態をご紹介します!

そもそも新聞配達ってどんな作業をするの?

●新聞を届ける

新聞配達は、購読契約をしている顧客の元へ各種新聞を配達することがメインの仕事です。
おそらく皆さんもご存知のことと思います。
実はそれ以外にも色んなことをやっていますので、次の項目から紹介していきましょう。

●チラシを折り込む

新聞を配達する前に、チラシを折り込む作業があります。
朝刊の時だけ(夕刊時も極稀に)新聞に折り込みます。

チラシは前日の昼にパートの方々が用意してくれているので(配達員がチラシを用意する店もある)、それを一つ一つ手作業で新聞に挟んでいきます。

その際、軍手は必須です。
特に、掌側にイボがついているものでなければなりません。
そうでないとツルツル滑って仕事になりませんからね。
それに、軍手をしていないと怪我をします。

新聞って、意外と切れ味が鋭いんです。
私も一度、手を切りました…
傷口を確認してみると、鋭利な刃物でスパッとやられたような感じでした。
治るまで結構な時間がかかりました。

ビニール封止

雨の日や、雨が降りそうな日、風が強い日などは、チラシを折り込んだ新聞をビニールで包みます。
ビニールで包むのには専用の装置があります。そのため、作業は難しくはありませんが、時間がかかります。

雨が多い梅雨の時期は、ビニールに包むという作業が増えるため地獄です。

私が働いていた店には、この装置が2台しかなく、7人の配達員で譲り合いながら使用しているため、さらに時間がかかっていました。店によってはビニールで包む作業専門の人がいるという所もあるようです(羨ましい)。

それ以外にも“常ビ”といって、特別な日でなくても「ビニールに包んで配達してほしい」という顧客もいるため、そういった個別の事情も覚えることが必要です。

●順路帳を確認

新聞を配達する際には、順路帳というものを確認する必要があります。
順路帳というのは、顧客の名前と配達経路が簡単に書かれているものです。
最初の頃は順路帳と首っ引きで配達することになります。

私の担当区域は配達する顧客が多かったので覚えられるか心配でしたが、2週間くらいで順路帳を見なくても配れるようになりました。
早い人だと3日、遅い人でも1か月で覚えられます。
しかし、“留守止め”(注1)や“即入”(注2)などがあるため、順路帳は毎日確認していました。

新聞配達の勤務時間や待遇は?

勤務時間

朝刊  1:00~5:00
夕刊 13:30~16:00

これは私の場合です。
店によっても違いますし、配達部数によっても違います。

また、配達員の配達速度によっても変わってきますので、仕事を早く終わらせられるかどうかは当人次第です。
さらに、新聞そのものが店に届く時間によっても変わってきます。
新聞を作っている店と配達を請け負っている店は違うからです。

給料

朝刊のみの場合、月収は10万円程度。
夕刊のみの場合、月収は 5万円程度。

配達部数によります。
私の居たお店は歩合制だったため、朝刊で400部、夕刊で200部ほど配達していましたが、給料は17万くらいでした。
皆勤手当てがプラスされてこの金額です。
店によっては歩合給ではなく固定給のところもあるようです。

休暇

新聞はほぼ毎日配達しますので、休みはそれほど多くありません。
私の居た店では月に5日でした。休刊日を含めて5日です。

実質、月に4日しか休めませんでした。
冠婚葬祭でも休めません。
というか、休んでもいいけれど、その後が辛くなります。
どういうことかというと、例えば、月の始め(1日、2日、3日)に3日間休んだとしましょう。
そうすると、月に休めるのは4日だけなので、その月に休める日数は残り1日だけとなります。
2週間連続勤務して1日休み、さらにそこからまた2週間連続勤務しなければならなくなります。

そして、このような勤務形態は労働基準法に違反していません。
これが恐ろしいところです。
(労働基準法には、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない、とあります。つまり、月に4日休めているから問題ないのです)

私も2週間連続勤務したことがありますが、泣きたくなりました…
その頃は朝刊だけの配達だったのでまだ良かったのですが、夕刊もやっていたらと思うとゾッとします。

私の店が特殊だったのか、どこでも同じなのかは分かりませんが、新聞配達をやろうという方は休めないということを覚悟しておくといいでしょう。(その分、仕事をする時間自体は短いんですけどね)

●ちなみに…新聞配達をするために必要なもの

新聞配達に興味を持った人がよく疑問に思うのが「免許って必要なの?」ということです。

担当区域の配達部数が少なければ自転車で問題はないです。
しかし、人が多い地域で仕事をするには原付免許を持っている(原付バイクを運転できる)ことが必須条件です。
首都圏で新聞配達をするのであれば、当然ながら人口が多いので原付免許は必須だと思ったほうが良いでしょう。

店によっては原付免許を取らせてくれる(資金援助してくれる)ところもあるので、もしこの仕事に興味がおありの方は面接のときに聞いてみてください。

新聞配達のメリット

煩わしい人間関係がない

時間になったら店へ出向き、新聞をバイクに積んで配達してまわるだけなので、人と関わることがほとんどありません。
これが最大のメリットだと思います。

一般的に、離職理由で最も多いのは人間関係による精神的瑕疵ですよね。
むしろ私は、それ以外にないと思うんですよ。
仕事の量が多くたって、周りの人が良ければ助けてくれるだろうし、仕事が難しくたって、周りの人が優しく教えてくれたらすぐに覚えられるから問題ないんです。

私は、人生におけるマイナスの中で最もウエイトを占めているのは対人コストだと考えています。
誰とも関わらないことが心の平安を維持するための最善の方法だと思います。
つまり新聞配達は、私のように、なるべく誰とも関わりたくないという方に是非とも勧めたい!

●寮や社宅、その他の補助があるかも

景気も少しずつ上向き、人手不足と言われる昨今。
新聞配達業界も当然ながらかなりの人手不足となっています。

そのため、というわけではないと思いますが、新聞配達は寮や社宅などを用意してくれる場合があります。
私も社宅を用意してもらい、店の近くに相場よりも格安で住んでいました。
住宅系の補助はかなり有難かったですね。

他にも、例えば大学生には、在学中の4年間に新聞配達をやってもらう代わりに、学費を全額補助する、なんていう店もあります。その場合、もちろん寮などの住環境もサポートされますし、新聞配達した分の給料も出ます。
いわゆる新聞奨学生というやつですね。
そういった色々なサポートがあることも新聞配達のメリットだと思います。

新聞配達のデメリット

台風の日や雪の日は死を覚悟する

雨が降ろうが雪が降ろうが風が強かろうが、新聞配達を休むことは出来ません。
台風と雪の日くらい休みにしてくれてもいいと思うのですが、昔から新聞はどんな日でも配達するというのが常識になってしまっているので、どうすることもできません。

おそらく、死人がでても是正されることはないでしょう。
そのため、どんなに悪天候の日でも耐えうる必要があります。

そんな大変な日もある新聞配達員になりたいという方に、死なないためのアドバイスをします。

まず台風の日は、風に対して垂直になってはダメです。
横から風を受けると、新聞を積んだバイクや自転車の重さを支えられずに転倒します。

建物が密集していて入り組んでいる場所なら風はだいぶ弱いのですが、幅広の道路などでは注意が必要です。
そういう所では止まらずに、ひとまず風の弱い場所へ避難しましょう。
配達時間なんか気にしていてはいけません。命が大事です。

次に雪の日は、バイクや自転車の前輪のブレーキは絶対に使ってはいけません。
ハンドルが操作不能になります。
フットブレーキ(バイクの後輪のブレーキ)だけにしましょう。

もちろん、スピードも出し過ぎてはいけません。
普段はなんともない道でも、雪の日は凶悪な道に変貌している可能性があるからです。
いつもなら回避できる凹凸が雪に隠れて見えなくなっている…なんてことがあるので、思わぬ怪我をする可能性があります。
十分に注意してください。

1月1日、神に見捨てられる日

新聞を購読している方は知っていると思いますが、元日はチラシが鬼のように多いです。
そのため、チラシを折り込むのも大変ですし、配達するのも大変です。
正直、大変という一言では語りつくせないですね。

ポストが小さくて入らない時は専用の袋があるので、わざわざそれに包んで玄関前などに置きにいかなければならないので本当に面倒です。
そんな日に雪が降ったらもう最悪です。
ここは“コキュートス”(注3)かよ、って思いますもの。
元日だけは全ての新聞配達員が神に見捨てられる日です。

●配達員を困らせる、早入れ

“早入れ”といって、顧客によっては「〇〇時までに配達してっ!」という要望を言ってくる人がいます。
実はこれ、配達員的にはホントに困ります…
なぜなら、決められた順路通りに配れないからです。

配達員たちが長年苦労して導き出した最適な道順があるのに、早入れのため、配達を中断して先にそこへ行かなければいけません。そしてまた元の場所に戻って配達を再開しなければならなくなるので、はっきり言って時間と労力の無駄なんです。

その分、手間賃を払ってくれるならいいのですが、そんなものはありません。
何の対価も支払わずにサービスを享受できることが当たり前だと思われているのでしょうね…

新聞配達に限らず、どんなものでもサービスには対価が必要です。
「これくらいタダでやってよ」と思われるかもしれませんが、いわゆるそういうブラック顧客が世の中をどんどん悪くしていることにそろそろ気付いてほしいものです。

●バイトがミスした、そのとき社員は……

配達員も人間ですので、不着(配り忘れ)や誤配(別な種類の新聞を配る)をすることがあります。
月に1、2回程度なら、まあ、しょうがないと思って頂けると幸いです。

しかし、それが週に2、3回となるとマズいですね。
なぜなら、バイトのミスの尻拭いをするのは社員さんだからです。
社員さんは朝刊と夕刊を配っているだけでなく、営業や集金や古紙回収などもしているので、バイトとは比べ物にならないほど忙しいのです。
その上、バイトが犯したミスのために謝りに行かなきゃならないとなると、そりゃあ堪忍袋の緒が切れますよね。
物凄い剣幕ですよ。

幸い、私はあまりミスしなかった(というか必死に頑張った)ので事なきを得ましたが、店によっては反省文を書かせるところもあるそうです。
でもまあ、ちゃんと配達する家を意識して、体調管理に気を付けて万全の状態で配達すれば問題はないと思います。

以上が、私が経験した新聞配達という仕事でした。
大変なことも多いですが、もし興味がある方はぜひ新聞配達をやってみてはいかがでしょうか。

(新聞配達については他にも記事を書いていますので、よろしければ読んでみて下さい)

注1:顧客が旅行などで留守のため、配達を一時的に停止すること。

注2:新規顧客に新聞を配達すること。新規顧客には月の始めから配るのが普通だが、月の途中で購読契約して、すぐに新聞を読みたいという顧客もいる。月の途中から配達することを即入という。

注3:ダンテの神曲、第一篇「地獄篇」において、地獄の最下層にあたる第九圏とされている。氷の地獄。

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