こんにちは、青山です。
今回はパレード(著:吉田修一)のレビューとなります。
「パレード」のあらすじ
杉本良介、大垣内琴美、相馬未来、伊原直輝、そこに小窪サトルが加わった五人は、東京千歳烏山の2LDKのマンションで共同生活を送っている。仲が良いわけではない、しかし、仲が悪いわけでもない。心の深いところまで歩み寄ろうとはしないが、冷淡に突き放すこともしない。何故この五人は一緒に生活しているのだろうか?それぞれの視点で描かれる奇妙な共同生活。
あきらめずに最後までちゃんと読んでほしい
第十五回山本周五郎賞受賞作です。
何故私がこの本を手に取ったのかというと、裏表紙に「発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた」と書かれていたからです。
ほう、面白そうじゃねぇか!
だって絶賛されているんですよ?
誰だって期待しちゃいますよ。
私はワクワクしながら読み進めました。
しかし、どれだけページをめくっても、心の針が振れないんですよ。どこにでもいそうな平凡な男女が集まって、特別なことをするわけでもなく、ダラダラと時間が過ぎていくだけ。
完全に評判倒れだわ
そう思いながら最後の章を読んでいると……
えっ!?
驚くと同時に全身が粟立ちました。
こいつら全員異常だ。
頭のねじが一本、ぶっ飛んでる…
でも、冷静になってから読み返してみると、案外これが普通なのかと思えてくる。
うわべだけの人間関係、深いところまで踏み込まないことが気遣いなのだという勘違い、罰することも罰せられることもなく、ただただ華やかそうに見えるパレードが続いていく…
私はここに登場する五人とは絶対に友達になりたくないと感じました。
けれど、すでに友達になってしまっているのでしょうね。
あなたの隣にいるその人は、きっと彼らの内の誰かです。
こんな作品は初めて
書くことがない…
これ以上、感想がないんです。
良作にしろ駄作にしろ、褒めるところや貶すところがたくさんあるはずなんです。
しかし、この作品にはもう述べることがない…
どういうことでしょうか?
それは、この作品が完成されているということです。
そして、この作品の完成度に寄与しているのは、登場人物のリアリティです。
よくもこれほど平凡な人間を描けたものだなぁ。
特別な人間を書くことはそれほど難しいことではないですが、これといって特徴のない人物を書くのは困難極まりない。
その人物に何もさせられないからです。
それは相当な閉塞感をともないます。
よくやった、という言葉しか出てきません。