こんにちは、青山です。
今回は海峡の光(著:辻仁成)のレビューとなります。
「海峡の光」のあらすじ
青函連絡船の客室係を辞め、函館少年刑務所で看守を勤める“私”。今年の春からは船舶訓練教室の副担当官の職務に就くことになっているが、そんな時、あいつは現れた。花井修。小学生時代の同級生であった。優等生の仮面を被り、“私”を苦しめた彼は今、罪を犯して将来を棒にふった。監視する“私”と監視される彼の海峡に光はあるのか?
辞書必須の読みづらい作品
この作品は芥川賞を受賞した作品です。
ページ数は百六十ページくらいなので、サラサラ読めるかと思って手に取りましたが、そんなことはありませんでした。
内容が濃いんです。
さすがは芥川賞を受賞しただけのことはあると感じました。
と、オブラートに包んだ言い方をすればそうなりますが、正直、読みづらい。
著者の感性で書かれている部分が散見され、その本質を理解するのは容易ではありませんね。
村上春樹さんに近いものがあります。
もっとも彼ほどには、著者の感性は日本人から超越してはいないですね。
まだ優しい方です。
しかし、玄人向けの本であることは間違いありません。
辞書を引きながらでなければ読めませんから。
難解なタイトルの意味
物語は主人公の“私”と、かつての級友である花井をメインに、過去と現在を行きつ戻りつしながら進んでいきます。
この花井という奴は恐ろしいです。
直接、主人公をいじめるわけではなく、巧みに人心を操作することで陰湿に追い詰めていきます。
そのやり方はエッジが効いていますね。
小学生であることを疑いますよ。
あまりに上手すぎるので、主人公以外、教師ですら、彼の歪んだ性格に気づく者がいないんです。
主人公も、もっと鈍感だったのなら幸せだったでしょうに。
人の心の機微に敏感であることも、場合によっては毒になるということがわかりましたね。
でも、この作品のタイトルが未だに理解できません。
海峡の光。
海峡とは、陸地に挟まれた海の狭い部分のことです。
この陸地が“私”と花井だとしたら、海は彼らの心の間に横たわるものの形容でしょう。
物理的な距離としては近いが、その溝を満たしている海は冷たくて深い。
なら、そこに光なんて見出しようがないでしょう。
どんな意図があってこんなタイトルにしたのか、私には推し量ることができませんでした。
読者に考えさせること自体が狙いなんですかね?