こんにちは、青山です。
今回は無貌伝~双児の子ら~(著:望月守宮)のレビューとなります。
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「無貌伝~双児の子ら~」のあらすじ
名探偵・秋津は、怪盗・無貌によって「顔」を奪われ、絶望の日々を送っていた。そこにサーカスにいた少年・望があらわれ、探偵助手になることに。そんな二人の前に、無貌から新たな犯行予告が送られてきた!狙われたのは鉄道王一族の一人娘、榎木芹――。怪異的連続殺人事件に望と秋津が挑む・・・!(裏表紙より)
独特な世界観が特徴の作品
第四十回メフィスト賞受賞作です。
前回ご紹介した「プールの底に眠る」に続いて、またまたメフィスト賞を受賞した作品について語りたいと思います。
まず、この作品の舞台は、我々が知る世界とは少し異なっています。
首都は東京ではなく藤京ですし、日本ではとっくになくなっている兵役の義務もあります。
それに加えて≪ヒトデナシ≫と呼ばれる妖怪のような存在がいます。
人々はそれを恐れ、あるいは敬い、中には使役して飼いならす者もいます。
≪ヒトデナシ≫には様々な種類がいて、人に対して善をなすものは依神、害をなすものは業魔と区別されています。
その業魔のうちの一体が“無貌”です。
無貌には人の顔を奪って利用することができる(その顔の人物そのものになる)能力があります。
顔を奪われた人は、ある理由から生きる気力を失い、二週間以内に自殺してしまいます。
無貌は厄介な存在ですが、その能力ゆえに捕まえることは困難です。
警察も完全にお手上げ状態。
唯一の望みは名探偵・秋津だけでしたが、彼もまた無貌によって顔を奪われてしまいます。
秋津は他の犠牲者と違い、自殺することはありませんでしたが、以前のように積極的に無貌へ挑もうとする気力を失ってしまいました。
そんな折、秋津の事務所にサーカスにいた少年・望が現れて・・・。
と、世界観が独特です。
読む人を選ぶ作品ですね。
私のようにメフィスト賞というネームバリューに惹かれて購読しようと思う人以外で、この作品の世界観を受け入れられるような好事家が果たしてどれくらいいるのか?
う~ん、刺さる人には刺さると思う・・・とだけ言っておきます。
正直、私には合わなかった…
この無貌伝ですが、現在までに続編が六作でています(完結済み)。
しかし、私が続きを読むことはないでしょう。
何故か?
一人の作家に多くの時間を割きたくないというのもありますが、単純に面白くないから、というのが本音です。
この作品は様々な要素を含んでいます。
①名探偵・秋津VS怪盗・無貌という、江戸川乱歩の明智小五郎VS怪人二十面相のような格闘謎解き。
②徒手空拳で、自分をクズだと卑下する少年・望の成長物語。
③≪ヒトデナシ≫という怪異が登場する伝奇。
ですが、何一つ私の心を震わせませんでした。
特に、この作品の独特な世界観が受け入れられない。
読むのが苦痛で仕方がありませんでした。
六百ページ近くあったので、ムカムカしつつも何とか意地で読み切りましたが、こんな作品は二度とゴメンです。
この無貌伝は西尾維新さんの「化物語」と似ていますが、面白さという点では雲泥の差ですね。
何故なら「化物語」には、著者の≪可愛い女の子を描きたい!≫という目も眩むような恒星のごとき情熱があるからです。情熱という光が、欠点を完全に隠してしまっているのです。
しかし、この無貌伝にはそういった情熱も見受けられません。
欠点のない小説なんてありませんが、それを読者に見せないようにする輝きがあって欲しいですね。