こんにちは、青山です。
今回は藁の楯(著:木内一裕)のレビューとなります。


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「藁の楯」のあらすじ

清丸国秀は二人の少女を暴行した後に撲殺した。殺害された少女の一人、蜷川知香の祖父である蜷川隆興は怒り狂い、清丸を殺した者に十億円を支払うという。
そんな折、己の命惜しさに清丸が福岡県警に出頭してきた。清丸を福岡から東京まで移送することを命じられた警察官たちと、金に目がくらんだ連中との壮絶な攻防が始まる。

原作はあの有名な漫画家さん

この作品は映画にもなったので知っている方も多いと思います。

実は私、映画の存在を知ってから小説が原作だと知ってこの本を読んだクチです。
帰納法的なやつね。

私は映画を観ていないのですが、大沢たかおさんや伊武雅刀さんや藤原竜也さんが出演していて面白そうでした。
実際、映画を観たという友人は、すごく面白かったと言っておりました。

この著者は珍しいタイプの小説家です。
小説家である前に、漫画家さんでもあるんです。

「BE-BOP-HIGHSCHOOL」といえば、読んだ方や知っている方も大勢いると思います。
某番組のコーナーで「B-RAP-HIGHSCHOOL」というのがありましたが、それはこの漫画からきています。

さて、蛇足はこれくらいにして本題へ移りましょう。

内容もタイトルも秀逸

少女を虐殺した人間の屑を守るために体を張る警察官たちの苦悩がメインの作品。

そう、この作品は“苦悩”の一言に尽きるのです。
想像してみてください。
人一人殺せば十億円が手に入るんですよ。
しかも、殺害対象は極悪人です。
守る価値があるんでしょうか?

これは私の場合ですが、頭の中でソロバンをはじいた結果、殺した方が得、という結論に至りました。
結論に至った経緯は長すぎるので割愛します。

なにしろ、そこに行きつくまでのプロセスだけで大長編小説が一つ完成するくらいの文量になりましたから。
つまり、それくらい“懊悩”(注1)するのです。

簡単に判断材料を箇条書きしてみましょう。

①清丸を殺せば十億円が得られる。
②清丸は人間の屑である。
③清丸のような人間を一人殺したところで死刑や無期懲役になることはなく、早ければ懲役五年、長くても懲役二十年ほどである。
④清丸を殺害した時点で、あなたは殺人者である。
⑤あなたは一生、殺人者として後ろ指をさされる。
⑥あなたが所持している大金目当てに詐欺師などが群がってくる。
⑦あなたは家族や友人たちでさえも信じられなくなり、心が休まることはない。
⑧あなたは生涯、孤独である。

清丸を殺して裁判になったら、殺人の動機が不純で情状酌量の余地もないので、下手をすると無期懲役は有り得るかもしれない。
清丸を殺しても殺人者として非難されず、逆に英雄視されて人気者となることもあるのでは?

大金を所持しているので、家族や親戚に殺害される可能性がある。
と、細かいことを書きだすとキリがないのでこのくらいにしておきましょう。

いかがでしょうか?
皆さんは清丸を殺しますか?
それとも何もせず、ただ法律に判断を委ねますか?

しかしまぁ、脳が震えるほど考えさせられる作品でした(ペテルギウス的な)。

藁の楯というタイトルも素晴らしいですよ。
以下にエピグラフをそのまま載せます。

神の目から見れば、人がどんなに命を永らえようとあがいたところで、所詮それは藁の楯を手に戦場へ赴くようなものである。 byリチャード・ハンコック

つまり、藁の楯とは「非常に頼りないもの」の形容なんですね。
そして、この作品の藁の楯とは、清丸を守る警察官たち、というより、人間の精神といってもいいでしょう。
そのことを念頭に置いて読むと、これがまた面白いんですよ。
二度三度と読み返したくなること間違いなしです。

注1:おうのうと読む。悩み悶えること。

 

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