こんにちは、青山です。
今回は白砂(著:鏑木蓮)のレビューとなります。
「白砂」のあらすじ
刑事・目黒一馬に、若い女性の変死体が発見されたとの連絡が入った。
被害者の名前は高村小夜、二十歳。
十八歳で京都から上京してきた予備校生で、両親がすでに他界しているため、バイトをしながら入試費用や授業料の準備をしていた。
家計簿を確認すると、倹しい暮らしぶりがうかがえた。
そんな真面目で慎ましい彼女が、どうして殺されなければならなかったのか?
ゴミ箱に捨てられていたペンダント、中年男性の影、彼女の短歌、孫を拒絶する祖母、それらの謎が一本の線でつながった時、驚愕の真実が胸を刺す。
思いがけず引き込まれてしまった作品
この本も、背表紙をみて購入したものです。
ただし、タイトルに惹かれたわけではなく、著者に惹かれました。
「東京ダモイ」で江戸川乱歩賞を受賞している方で、人の心情を描くのがうまいなぁと、個人的には思っています。
だから最初は、自分の小説に生かすべく、謎なんかそっちのけで登場人物の言動ばかり注視していたんですが……
五十ページも読んでいると、いつの間にか謎の渦へと引き込まれていました。
なんという吸引力だろうか。
ダイソンもびっくりでしょう。
この作品には語り手が二人います。
刑事の目黒と、吉崎という女性です。
二人の視点が入れ替わりながら、ストーリーが進んでいきます。
殺害された小夜の故郷、美山で話がつながってからが面白いですね。
小夜の短歌を手掛かりに目黒が謎を解いていく展開は目を瞠るものがあります。
そして、“白砂”が何なのかは最初の方でわかると思いますが、その深い意味は、物語を読み進めないと見えてきません。
ただ一言、私が語れることがあるとすれば、あの女たちは、愛していただけなんだってことくらいです。
「愛で人を殺せるのなら、憎しみで救えもするだろう」っていう、あるアニメの女性キャラの言葉が、何故か不意に頭をよぎりました。
短歌を知っていればもっと楽しめたはず
これは自分へのダメだしなんですが、もう少し短歌について勉強しておくべきでした…
小夜が、ふるさと短歌大賞を受賞した作品の良さがさっぱりわからない…
この短歌がものすごく重要なものであるだけに、非常に悔しい!
大賞を獲れる短歌を自分の作品で披露するのって、自分の実力に自信がなきゃ出来ないじゃないですか?
私にその短歌の良さがわかる審美眼があれば、もっと高く著者を評価できるし、逆に悪かったら、その天狗の鼻をへし折ることもできるのに、私のレベルが低いからできないという掻痒感で、頭がおかしくなりそうです。
もっと好き嫌いせずに裾野を広げなきゃいけないと感じさせられました。
とても良い勉強になりました。