こんにちは、青山です。
今回は金田一少年の事件簿外伝・犯人たちの事件簿 (著:船津紳平)のレビューとなります。

「金田一少年の事件簿外伝・犯人たちの事件簿」のあらすじ

「やめろ金田一!みんなの前で俺のトリックを暴かないでくれ!」
金田一少年の事件簿で登場した犯人たちの視点でおくるスピンオフ作品。
彼らが裏で何を考え、どんな行動をしてきたのかをコミカルに描く!

※この後、ネタバレを含みますのでご了承ください。

私は金田一少年の事件簿が好きで全巻読破しました。
現在連載中の「金田一37歳の事件簿」も読んでいます。
そして、本作も4巻まで読みました。
いやはや、実に面白いですね。
腹筋が崩壊するほど笑いました。
金田一少年の事件簿に詳しい人なら、抱腹絶倒、間違いなし!

シリアス0%、ギャグ100%

金田一少年の事件簿を読んだことがある方はわかると思うのですが(というか、読んだことがある方しかこのレビューを見ていないでしょうけど)、今まで登場してきた犯人たちって、誰も彼もが悲しくて辛い事情を抱えていたじゃないですか?

罪を犯すことは悪いことだけれど、犯人を凶行に駆り立てた被害者たちにも非がないわけじゃないから、事件が解決してもなお口に残るほろ苦さ・・・。

“謎は全て解けた”というカタルシスは味わえても、謎ではない部分で胸に残るシコリが、金田一少年の事件簿の長所であり短所であるわけですが、本作では犯人たちの“重たい部分”を極力省き・・・というか完全に省いてしまっていますね。

もうね、酷い(笑)
とにかくね、酷い(笑)
犯人たちのシリアスなバックボーンを知っている人が読んだら、「おいおい、ここまでキャラ崩壊させて大丈夫なのか? 原作者たちに怒られないか?」
って心配になると思います。
私も心配になりました。
でも、原作者たちは寛大だったようで、というか神だったようで、怒られるどころか笑ってもらえたそうですけどね(単行本に描いてありました)。

しかし、キャラ崩壊が甚だしいので、原作のイメージを損ないたくないという方は≪絶対に読んではいけません!!!≫
ホント、酷いのでね。
その点を看過できれば、相当に楽しめる作品だと思いますよ。

「この犯人がこんなこと言うんかいっ!」って毎度毎度ツッコミを入れずにはいられないでしょう。

加えて本作は、原作ではあまり触れられていない犯人の舞台裏についてもイジッているので、そこがまた見ものですね。

例えば、オペラ座館殺人事件のファントム。
演劇部のメンバーとして訪れる前に歌月という名前でチェックインしようとするのですが、顔を包帯でグルグル巻きにしているので怪しさが爆発しちゃってるんですよね。
それは犯人もわかってるんですけどね。
果たしてこの状態でチェックインできるのかを懸念していますから。

で、いざ館へ行ってオーナーと対面すると・・・
オーナー「あ・・・怪しさがすごい!! 泊めたいという気持ちが・・・1ミリも起こらん!!」

そりゃそうだ、そんな奴、私だって泊めたくない(笑)
でも、最終的に泊めちゃうんですよね~~~。
この二人のやりとりはホントに面白いので、是非とも単行本を購入して読んでいただきたいですね。

そうそうファントムといえば、窓にワイヤーを巡らせておいて、ターゲットが窓から頭を出したらワイヤーを引っ張って絞殺するっていうトリックがあったじゃないですか?
あれ気になってたんですよ。
一体どうやって窓にワイヤーを巡らせたのか。
原作ではサラッと流されていましたが、本作ではしっかりと描かれています。
このシーン、私にとっては物凄いツボです(笑)

ファントム「ワイヤーを内側から見えないように下の部屋の窓に巡らせなきゃならないのだが・・・え? これどうやって巡らせるの?」
ファントムはこの後、自身の胴に命綱をくくりつけて下へ降りてゆき、ワイヤーを窓へ巡らせました。

・・・ってフィジカル(力業)かいっ!?

心の中で思いっきりツッコミを入れてしまいました。
そして、ワイヤーを仕掛け終え、肩で息をしているファントムのセリフが以下の通り。

ファントム「SASUKE出れるわ!!」

もう出ろよ! 出ちまえばいいさ!!
いや~、ツッコミが止まりませんでしたね。
ツッコミが止まらなかったと言えば、タロット山荘殺人事件の陰の脅迫者に対してもそうでしたね。

風車に死体をくくりつけるところなんか、腹筋が壊れるかと思いましたよ。

陰の脅迫者「風車に中年男性くくりつけるの初めてだから・・・」
いや、誰だってそうだろ!?

陰の脅迫者「考えるんだ・・・東大出のメンタル(知能)で!!」
どんな知的な方法を見せてくれるのか?

ワクワクしながら次のページへ進むと・・・普通にフィジカル(力業)!!

結局、フィジカル(力業)!!!

それに、陰の脅迫者は自身が東大出であることを執拗に主張してくるのですが、それがまた面白い。

陰の脅迫者「孫ならギリいけるか? いや、みくびらない! なぜなら俺は東大出だから!」

「トリックに地味も派手もない。 そんなことは東大を出ていればわかる」

「この男優秀だ! 東大出てないのに!」

ってな感じです。

上記の二人だけでなく、他の犯人たちもいい味出してますよ。
レッドラムは蝋人形を自分で作るし、それで思い入れがあるから、それを自ら切断するときにゴメンねって涙を浮かべるシーンとか、見えざる敵がドアを渡っていくシーンとか、葬送銀貨が「トリックが思いつかない、みたいなコミカルなやつは一切なしよ」っていう丁寧な振りをしてか~ら~の~「トリック・・・全く思いつかねぇ」っていうセリフとか、腹筋が休まる暇がないですね。

それに、他の漫画やテレビ番組のパロディも多分に盛り込んであるので、元ネタがわかっていると楽しいですよ。
取りあえず、私が気づいたものを挙げられるだけ挙げてみます。

カイジ、ジョジョ、ハンターハンター、北の国から、一休さん、家政婦は見た、水曜日のダウンタウン

わかったのはこんなところです。
他にも色んな芸人さんや東進ハイスクールの講義までパロっているので、読んでいて全く飽きないですね。正直、文章だけでは伝わらないと思うので、漫画を読んでください、マジで面白いから!

この作者は天才(変態?)だ

そうそう、この作者の天才性(変態性?)が垣間見える部分について話したいと思います。

作者は唐突にお色気シーン(犯人の裸)をブッコんでくるんですが、裸になった(裸にされた)犯人というのが、放課後の魔術師・レッドラム・凶鳥の命の三名なんですよ。

・・・おわかりいただけただろうか?

セクシーを担当させるには、いささか歳をとりすぎているのではないでしょうかね?

誰得だよ?(冗談でも俺得とは言えない)
しかも、しかもですよ、レッドラムと凶鳥の命についてはシャワーシーンが描かれているのですが、これがもう凄いのなんのって!

普通はさ、大事な部分を隠すための表現といったら湯気とか髪とか、そうでなければ不自然な光とか、そういうのがセオリーでしょう?
でもね、この作者はそういう常識をブチ破りましたよ。

なんとね、使用したのはね、“本作のタイトル”ですよ!!!
その発想は出てこないわ!!!
この作者、いい感じにクレイジーだわ(笑)
(“てーきゅう”でもタイトルを使ってました。やっぱり天才(変態?)は同じことを考えるんですね)

最後に、本作について一言で〆ると・・・実にけしからん、もっとやれ!!!

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