こんにちは、青山です。
今回は笑う招き猫(著:山本幸久)のレビューとなります。


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「笑う招き猫」のあらすじ

「アカコとヒトミ」は桃餐プロに所属するお笑い芸人コンビだ。
コンビを組んで二年の駆け出しで、初めてのライブで頂いたお金は二千円。
毎日の食事にも困る有様。
でも、笑いにかける情熱は誰にも負けない。
いつか武道館で、いや、カーネギーホールで漫才をやってやる!
身長百五十センチのアカコと身長百八十センチのヒトミ、このデコボココンビが心を込めて笑いを届ける。

女性芸人を主人公にした著者を評価したい

これは第十六回小説すばる新人賞を受賞した作品です。

私はお笑いも大好きなので、タイトルに惹かれて読みました。
笑うって大事ですよ。
ため息ばかりついていると鬱になるそうですからね、いやホント。

日本メンタルヘルス協会の衛藤信之さんがアメリカの大学にいた頃、鬱になる方法を発見した先生がいたそうです。
その方法は、「一日千回ため息をつく」という、突拍子もないもの。
しかし、一日千回のため息を三か月続ければ、ほぼ誰でも鬱状態になるそうです。
その方法を発見した先生本人が、鬱になってそれを証明したというから間違いありません。

つまり、精神的に健康でいたければ、ため息を吐く代わりに笑えばいいということです。
さあ、画面の前の皆さんも、俺と一緒に笑いましょう!

ぎゃはははは!

とまあ、人生に明るい展望が開けたところで、作品の内容に触れていきましょう。

まず、主人公が女性という所に注目ですね。
お笑い芸人て、男性が多いじゃないですか?
私が“寡聞にして存じない”(注1)だけか、まだ日の目をみていないだけかもしれませんが、パッと思いつく女性芸人コンビってあまりいないんですよ。

尼神インター、姫くり、モエヤン、阿佐ヶ谷姉妹、アジアン、オアシズ、クワバタオハラ、たんぽぽ、日本エレキテル連合、ハリセンボン、ガンバレルーヤ……、ダメだ、これ以上でてこない。

男性コンビだったら百組は余裕で言えるんだけれど、女性芸人で、しかもコンビとなると難しいですね。
そこであえて、女性芸人コンビを主人公にした著者を評価したい。
ただでさえ見本にするべき材料が少ない上に、異性について書いているのだから、相当大変だったでしょう。

次に、この作品にはユニークな趣向が多々見受けられます。
例えば、主人公の一人であるアカコは、身長が低くてぽっちゃりしているのですが、あだ名が「豆タンク」なんです。
ね、絶妙でしょ!?

で、もう一人の主人公、ヒトミが乗っている自転車の名前(いや、名前つけとるんかい!?)は「レッドバロン」(赤い男爵って……。つーか、バイクのイメージしかないわ。たしかに自転車を英語でバイクって言うけれども)。

ね、ツッコミどころも豊富なんですよ!!

きわめつけは、二人の歌ですね。
とにかく歌うんですよ、この二人。
それがこの作品の屋台骨ですね。
まあ、それは読んで確認してもらいましょうか。

この作品を読むと笑いに対する著者の真摯な姿勢がわかりますよ。
心が温かくなって、目頭が熱くなって、笑顔で読み終えられた作品なんてこれが初めてじゃないかしら?

文章だけじゃ面白さがいまいち伝わらない

当然というべきか、“詮無い”(注2)ことなのだが、二人の漫才でイマイチ笑えないんだよな。
やっぱり漫才っていうのは、その二人の声の調子とか表情とか独特の間とか、そういったものがあってこそなんだよなぁ。

又吉の「火花」を読んでも感じました。
アカコはモノマネがうまいという設定なんですが、それも文章だけじゃわからんしなぁ。
聴いてみたいぜ、アカコの宇多田ヒカルの歌や森進一の“こんばんは”を。

注1:見聞きすることが少ないため、そのことを知らない。

注2:仕方がない、どうしようもないこと。

 

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