こんにちは、青山です。
今回は従順のすすめ 廉価版(著:清水竜志)のレビューとなります。
「従順のすすめ 廉価版」のあらすじ
開かれた未来への旅立ち。その煌びやかな運命のために、混迷する現代社会を生き抜く指針となる現代思想の書。
「我々は成功するために従順になるのではなく、従順になる事自体が成功なのだ」(表紙より)
福沢諭吉に憧れる著者
人によって捉え方が違う概念の最大公約数を探し出すのは大変なことです。
しかし本書は、漠然とし過ぎていて容易には説明できない「好き」や「学業・学歴」や「お金」など、10の物事に対して一つの答えを導き出しています。
「的を射ているな」と思うものもあれば、「突飛だな」と思うものもありましたが、思想書や哲学書というものを読むときに重要なのは、そこに書かれている事柄の蓋然性ではなく、【それらと向き合う者がどう思考するか】でしょう。
さて、前置きはこれくらいにして、思想家である著者が同じ思想家である福沢諭吉に憧れて執筆した本書がいかなる内容のものか、レビューしていこうと思います。
1.好きとは何か
好きとは、自分が従順になれるということ。
著者はそう言っています。
この従順というフレーズによって、私は蒙を啓かれました。
私は今まで、好きとは隷属することだと思っていたのですが、好きという言葉にネガティブなイメージはないので、隷属では少し違うなと感じていたんです。
そこへ従順という単語を提示されて、≪これだ!≫と膝を打ちました。
隷属から負の印象を取り払うと、それ即ち従順になると思ったからです。
皆さんも、自分の“好き”に“従順”を代入してみてください。
それで違和感がなければ、本書はあなたにとって有益なものになるでしょう。
そして、違和感を覚えたあなたにとっては、さらに有益なものになるでしょう。
2.学業、学歴とは何か
著者は、【この章を書きたくて本書を執筆したと言っても過言ではない】と書いているだけあって、この章への力の入れようが違いますね。
これも先に答えを言ってしまうと学業、学歴とは、“従順さを養い身につけるための訓練”と“その証”であるということです。
ここでも従順という言葉が出てきますね。
というか、ここから先も、最初の章で躓いていては内容が頭に入ってきませんよ。
なので、好きとは従順であるということだと納得できない方は、とりあえず従順であると措定しましょう。
つまり、本書に対して従順になる必要があるということです。
・・・さて、従順になってもらったところで話を戻しましょう。
学業は訓練。
同意ですね。
社会に寄与するための人材資源となるべく修行することが学業である、というわけです。
もっと解釈を広げれば、人としての在り方の訓練とも言えます。
従順さを養い身につけるというと、個性を排除され、ドロドロに溶かされ、鋳型に流し込まれるようなイメージを持つ人もいると思いますが、そういうことではありません。
まず、何も知らない状態で物事の真偽や善悪や正否を判断することができるでしょうか?
できないでしょう?
だから初めの内は、先生の言う通りにした方がいいということです。
社会に出てからも同じ。
上司や先輩の指示に素直に従い、教えられた作業をその通りにこなせるようになるまでやるのです。
そして、ある程度わかってきたら次のステップ(疑う)に進めばいいのです。
「なんかこれ、違うんじゃね?」
と疑って、詳しく調査して、思考実験を繰り返して、そしてやっぱり違うなと思ったら、その時に初めて反抗すればいいのです。
悪い教師や上司や先輩に当たったら不運だとは思いますが、それはどうにもならないことですから、それを嘆くよりも【良い勉強になった】とポジティブに捉えた方がよいでしょう。
3.お金とは何か
この章を考えることは、著者にとって一番大変だったというだけあって、懊悩の跡が見られます。
なので、ここは答えを言いたくないですね。
答えを知りたければ本書を購入してください。
損はしないでしょう。
4.ストレスとは何か
本章については、どうも限定的で客観性が足りない気がしました。
なので、同意しかねます。
ストレスが精神的ダメージというのはわかりますが、この世の中がストレスをかけ合う生存競争社会だとはどうしても思えないのです。
そう思いたくないだけかもしれませんが・・・。
5.宗教とは何か
私はもう結論が出ていたので、本章は読みませんでした。
私の結論は以下の通りです。
宗教とは、死を克服するための手段ですよ。
6.個性とは何か
個性とは、その個体特有の性質のことですね。
個性的な人間は変わり者というわけではなく、≪面白い≫とか≪カッコイイ≫とか≪可愛い≫といったポジティブな魅力のある人のことだという著者の考えには同意します。
しかし、特出した仕事をしていたり、メディアに取り上げられていたり、固有の才能を発揮したりすることで目立ち、それで御飯が食べられている人間である必要はないのでは?
そこについては苦言を呈したいですね。
7.若者の品格とは何か
品格とは、その人の気高さや上品さのことです。
それをあんな言葉で還元するとは・・・。
本章は実に素晴らしいですね!
私も、“いただきます”や“ごちそうさま”、言ってないなぁ。
8.競争とは何か
競争したいという欲求が本能の根底にある、と著者は言っていますね。
うん、まあ、あるかな。
ただ、日本人は欧米人達と違って長く農耕を続けてきましたから、だいぶ薄れているとは思いますがね。
だから、人間誰しも競争に勝って優越感と達成感に浸りたいという事なのだ、と断言されても首をかしげてしまう。
しかし、細かい点に目をつぶれば、なかなかいい視座を持っているなと感じました。
9.死とは何か
自殺未遂を経験している著者が死と向き合って書いているだけあって、説得力が違います。
実は、私も自殺未遂を経験しています。
なので、非常に共感できました。
死について考えるという事は、生きるという事を考えることです。
だってそうでしょ?
死以外の状態が生なんですから。
皆さんも本書を読んで、死について考えてみて欲しいですね。
10.人間とは何か
マクロな視点で見たら、確かにそうだなと思いました。
世界中の人たちが著者と同じ思想を持っていたら、戦争なんて起きないですね。
ユートピアが見えました。
決して実現することはないだろうけれど。
ただ、希望は持ちたいですね。
だって宇宙から見たら、我々の区別なんてつかないですよ。
そう、小さな虫にしか見えない。
まとめ
物凄い噛み応えでしたね。
100ページほどしかないのに、読み終わるまで20時間くらいかかりました。
ホント、ペラッペラなのにね。
アマゾンで購入して、本書が届いた時は、その薄さに絶句しました。
「1,300円も払ってこれかい!?」ってね。
ただ、中身が濃い!
余裕でお値段以上でした(ニトリかよ)。
ただ、欠点はあります。
まず、誤字脱字が多いこと。
18ページ 2行目 最良×→裁量〇
5行目 身に着く×→身に付く〇
38ページ14行目 指し×→サシ(肉の脂)〇
あと、不親切な表現があること。
20ページ14行目
【基本は親がちゃんとしていないと、子供もちゃんと出来ない仕組みになっているのが、この社会全体のコンセンサスであると思う。】
社会全体のコンセンサスを噛み砕いていえば、“みんな同意見”ということになる。
なら、共通認識とか、横文字じゃない言葉を使ってほしかった。
それに、社会全体のコンセンサスという部分は、もっと前に持ってきた方が分かりやすい文章になったのではないかと思われます。
しかし、そこは物書きの個性ですから、口を出すべきではないかもしれませんね。
それに、そういう所を差し引いても、本書は読みやすいですね。
思想書や哲学書の中には読者のことなんか全く考えていない自己中心的で自己陶酔しているとしか思えないものもありますからね。
▼気になったら読んでみてください。