こんにちは、青山です。
今回はどうしようもない恋の唄 (著:草凪優)のレビューとなります。
「どうしようもない恋の唄 」のあらすじ
「ここにいる間は毎晩わたしを抱いて」
仕事も妻も失い、死に場所を求めて迷い込んだ場末の町。矢代光敏はそこで出会ったソープ嬢のヒナに拾われる。ままごとのような生活と、呆れるほど無防備で危ういヒナの体に溺れていく矢代。しかし、断ち切りがたい過去への未練がやがて人生最悪の事態を招く・・・・・。どうしようもない男と女が、最後に見出す奇跡のような愛とは?(裏表紙より)
官能か純愛か…
本作は「この官能文庫がすごい!」2010の大賞を受賞した作品です。
このタイトル、どこかで聞いたような気がする、と思った方も多いと思います。それもそのはず、最近、映画化しましたからね。
しかし、10年近くも前の作品を映像化するっていうのは、一体どんな意図があったのでしょうね?全然タイムリーじゃないし、R18ですから鑑賞者も制限されてしまうじゃないですか?
何故、今なのか?
その辺りの事情に詳しい方がいたら教えてください。
では、気を取り直して、書評に移りたいと思います。
まあ、結論から言ってしまうと、どうも中途半端な作品ですね。
官能小説として読んだ場合、どうも一味足りない。
文章から受ける官能小説特有のドロリとした汚穢にも似た嫌な生々しさや、それに伴う腐臭を嗅ぎとれないんですよ。
“糜爛”(注1)した醜さがあってこその官能小説じゃないですか?
それが足りてないんですよ。
かといって、純愛小説として読めるかと問われれば、性的描写が邪魔をしているから無理だなと答えるしかない。
この小説の欠点は≪官能小説にしては清廉すぎる≫ということですね。
情景描写は丁寧で巧いし、登場人物の造形もしっかりしているので、官能描写さえなければ誰もが感動できる作品だったことでしょう。
申し添えておきますが、官能描写が悪いわけでもないんですよ。
その描写を読んで、その光景を想像しながら自慰行為できるくらいには興奮します。
だから、性的な部分とそうでない部分を別離させて、それぞれを単体として見れば欠点がない作品なんですよ。
私的には、官能描写を削って純愛小説として世に出してほしかったですけどね。でも、それだと恐らく、いかなる賞も獲れなかった可能性はありますね。
どうしてこの作品が大賞を受賞できたのかと言えば、官能小説でありながら官能小説らしくなかったというのが理由でしょうから。
大同小異の作品ばかり並んでいる中に本作があったら、それはもう新鮮に感じられたはずですからね。
惜しい、実に惜しい作品です。
ホント、どうしようもないですね。
注1:びらん、と読む。皮膚や粘膜の上層の細胞がはがれ落ち、内層が露出している状態になること。ただれること。
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